東京地方裁判所 昭和26年(ワ)1404号 判決
原告が本件商標権譲渡の無効確認を求める法律上の利益を有するものであるか否かにつき按ずるに、商標登録の出願代理人が出願者本人に対し委任事務処理の為善良なる管理者の注意義務を負うものであることは明らかであるが、元来出願商標につき登録の査定を受くべきや否、之が査定を受くる為原告主張の如き商標登録取消の審判を求むべきや否、之を決定しその手続を遂行する者は即ち出願者本人であり、右行為自体が出願代理人の受任事務に属しないことは明白である。蓋し出願代理人は出願者本人の為これらの本人の行為を代理する者に過ぎないからである。従つて原告主張の出願商標の登録の査定を受けること自体の為、本件商標権譲渡の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有するものは出願者本人であつて、出願代理人はかかる法律上の利益を有しないものといわなければならない。又原告の主張する金銭債権が本件商標権の譲渡の無効なりや否やと経済上の関聯を有することは容易に看取し得るところではあるが、後者の確定が前者の確定と法律上直接の関係あるものとは解し難いから、原告がかかる金銭債権を有する一事によつて本件商標権譲渡の無効確認を求むる法律上の利益あるものとゆうこともできない。
かように原告は無効確認を求むる法律上の利益を有しないものであるから、果して右商標権の譲渡が無効なりや否やの点を判断する迄もなく、原告の本訴請求は失当として棄却すべきものである。